前回お話したように、奄美大島で始められた大島紬も明治5年には鹿児島市が産業として着目し、奄美から織工を招き製織普及に努めた結果、鹿児島県内に二大産地を形成するに至ったのでした。その一つが本場奄美大島であります。この証紙には地球儀の印がついています。対する鹿児島の証紙には日の丸の旗印になります。お持ちの大島紬の端布を確認してみたらどうでしょうか。どこの産地かがはっきり分かると思います。
マルキというのを聞いた事がありますでしょうか。マルキの事を本場大島紬の品質を表す単位と思われがちですが、縦絣糸の本数を表す単位の事をいいます。1マルキは縦絣糸80本をいいます。9.6マルキ、7.2マルキ、6.0マルキ、5.8マルキなどが主で、例えば9.6マルキの紡ぎは縦絣糸が768本(9.6×80本)入っていることになります。縦絣糸の本数が多いほど、経と緯の絣合わせが難しく、精巧な絣となり高級品となるのです。
算(よみ)というのを聞いた事があるでしょうか。縦糸の密度の単位を「算(よみ)」といいます。縫糸80本が1算で、13算か15.5算が主ですが、18算の製品もあるそうです。15.5の場合は筬幅(おさはば)約40pの間に、1240本(80本×15.5)の経糸がかかっていることになります。経糸の密度が高くなれば緯糸の打ち込み密度も高くなるのです。基本的に奄美は伝統的に13算で織られ、鹿児島は15.5算で織られているそうです。
大島紬は特に泥染めが特徴的です。糸は生糸を使用し、奄美大島に自生するテーチキ(車輪梅)の枝を細かく刻んで煮出し、その液で生糸を糸染めすると茶に染まります。その後、泥に浸し揉み込むと、泥が媒染剤の役割をして艶やかな黒色に染め上げられ、これを何度も繰り返す事で色の深みが出るのです。この茶がかかった黒の「泥大島」によって大島紬は全国に広まったのです。その他には、白大島や藍大島や草木染大島などがあります。
泥藍大島は植物藍で先染めした糸を絣むしろにして、テーチキと泥染めで染色した紬であります。地糸が泥染め特有の渋い黒地になっており、絣糸の部分が藍色を主体に表現された上品な紬です。
色大島は化学染料を使用して色絣模様を染色したものなので、地色、絣模様とも自由に配色ができ、モダンなものや大胆なデザインができます。
白大島は地糸を染めずに白のままで絣模様に色を入れた紬です。春の終わりや秋の初めなど単衣仕立てにして着られるのが嬉しいですね。
大島紬は太田質店にとっては重要な質草の一つに数えられます。というのも、結構皆さんがお持ちだということでしょうか。普段着の紬ですが、高級感を漂わせ、誰でも着物に興味がある人は欲しくなる着物の一つです。そのため、太田質店ではよく見かけ、そして着物を着なくなってきた時代でも多くを目にしております。これからも、どしどし手に取り多くを見て勉強しながら着物と一緒に太田質店も歩んでいこうと考えています。
(新・呉服に強くなる本参照)